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講師コラム:楠浦 崇央 先生


『 発明塾式 ビジネスのための知財講座 』




コラムへのご意見、ご感想がありましたら、こちらまでお願いします。

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第1回 [ 間違いだらけの知財教育(前編)](2009/4/7)



 1.イントロ
 これから全12回の予定で、いわゆる知財を専門と「しない」方々、特に「エンジニア」や、「事業企画担当者」「営業」「マーケティング担当者」「アナリスト」といった人々にとって「本当に必要な知財」の知識は何か、ということを皆様と一緒に考えてみたい。

 第一回は、イントロダクションとして「間違いだらけの知財教育」と題し、現在の知財教育がなぜつまらないのか、事業を推進する人間、起業家・企業家にとって本当に必要な知識は何か、ということを少し論じたい。
 下名がエンジニアの出身であることから、「エンジニアにとっての知財」という観点からの記述が多くなりますが、「営業」「マーケティング担当者」「企画担当者」等の知財に縁遠いと思っておられる方々および、知財教育を担当し日々苦労しておられる方々と問題意識を共有したいと考えており、ぜひ参考にしていただきたい。

 2.事業の構築と「知の創造」〜現在の「知財教育」の問題点
 知財の専門家以外の人にとって、一般的に「知財」もしくは「特許」と聞いて思い起こすのは、「特許を出せ」と言われた経験か、「特許を侵害するとこういうことになる」というニュース等であろう。つまり、従来の「知財」や「特許」という言葉は「権利」「法律」という概念と表裏一体となっている。

 「特許教育」と聞くと眠くなる方が多いのではないだろうか?(筆者もその一人である) たとえば、何人かのエンジニアに聞いてみると、「退屈」「眠い」「そもそも受けた記憶がない」という返事が返ってくる。なぜか?その原因は、現在どのような「知財教育」がなされているかを考えてみるとわかる。現在なされている知財教育の多くは以下の3つのいずれか(もしくはすべて)である。

 @ 特許制度に代表される制度・法律の説明
 A 他社権利を侵害するとこんなに恐ろしい」という脅し
 B 特許検索ソフトの使い方

 しかしながら、多くのビジネスマンにとって、上記3つの知識はほとんど仕事で使わないものではないだろうか?少なくとも、日常業務のレベルからはかけ離れたものであることは間違いない。

 しかし、そもそもビジネスにおいて法律上の「権利」だけあっても実体の「事業」がなければ意味をなさない。
 「権利」というのは、本来何らかの自分の活動(=事業活動)を守るためのものであり、裏方の存在である。それなのになぜ、従来の「知財教育」「特許教育」では、法律論・権利論のみがクローズアップされてきたのか。振り返るために、事業に至るまでの一連の流れに沿って、知的資産と特許の関係について考え直してみたのが図1.「『知』のマネージメント」である。

 


 事業の創出という点から考えた場合、まずは「目標」とする市場がある。そしてそのニーズを満たすべく、様々な課題を乗り越え(課題がなければ、だれかがすでに参入している)、その過程で多くの知的資産が「創出」される。そこで、後続参入者をブロックするための障壁として、いくつかの知的資産について特許化を行い、権利を「保護」してもらう。また、特許制度の本来の主旨から言うと、情報が公開されることで、新たなイノベーションの創出にもつながるわけである。

 ここで、「特許」という概念がカバーするのは、最後の「保護」の部分だけである。それに比べて「知的資産」「知的財産」という概念(「知的創造」などでもよいが)はもっと広い、たとえば事業目標や技術課題の設定、それに対するアイデアの創出などを含む。にもかかわらず、これまでは「知財教育」≒「特許教育」(場合によっては著作権や意匠などのほかの知的財産に関する知識も含まれるが、いずれにしても法律論であることには変わりがない)と理解され、ひたすら法律教育がなされてきた。
 しかし、法律の専門家以外の人間に、そこまでの法律教育が必要だろうか?あるいは、もっと必要な教育があるのではなかろうか?

 すこし格好良くまとめるなら、事業において必要とされている「知財教育」は、従来の「特許教育」ではなく、もっと広く事業領域全体にわたる「『知のマネージメント』に関する教育」なのである。事業に必要な知を生み出す人間(図2.)にそのツールを授けることが、知財教育の本来の使命であると、弊社は考えている。



 事業活動を通じて価値が向上する資産は、会社において「人」だけであり、ここへの投資を怠る会社に未来はない。そして、少子高齢化がますます進み、20年後には30代人口が現在の2/3になるとわかっている(図3.)中で、我々が目指すべきは知的生産性の向上であり、そのためにこそ「知財教育」は必要なのである。いまや「人材」は希少資源である。そしてドラッカーの言を待つまでもなく、人口動態の変化は不可避の「来るべき未来」であり、ますます希少になることが決まっている資源なのである。
 (後編へ続く)

 




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第2回 [ 間違いだらけの知財教育(後編)](2009/4/21)



 3.インテリジェンスとしての特許情報分析〜この知識DBを使いこなす
 「特許を調べる」というと99%の人が、「自分が特許出願をする前に、すでに同じ特許が出ていないか調べておく」という作業を思い浮かべる。もちろんそれも必要な作業であるが、本来の特許制度の主旨から言うと、「独占権を付与する代わりに公開が義務付けられた」技術情報が特許であり、偉大な先人たちの発明が詰まった膨大な知識DBである。これをこのままにしておく手はない。
 私が学生時代には、多くの機械工学や電気工学系の学科で盛んに人工知能の研究がおこなわれていたが、最近はすっかり影を潜めたようである。代わりにGoogleが、すでに多くの人たちにとってある種の「人工知能」の役割を果たしている。
 大げさにいえば、「世の中に存在する膨大な情報を検索・適切に表示すること」が可能となった時点で、人間の知能の一部がそこに出現したわけである。

 たとえば、今後Intel社がどういう事業分野に進出しようとしているか、ということは、その開発活動を分析することで推定できる。では、Intel社の開発活動を知るにはどうすればいいのか。答えは簡単である。USPTOのHP(http://www.uspto.gov/)にアクセスすれば、誰でもその情報が入手可能なのである。
 そしてその情報コストは限りなくゼロに近い。ものの数分で、何の予備知識もない方でも、Intel社がラマン分光分析やNMRといった技術を用いてバイオテクノロジー分野に進出しようとしていることがわかる。Intel社の動向に詳しい方であれば、これは現在Intel社が、医療向けのモバイル機器を開発・販売していることとも、おそらく無関係ではないだろう、と納得がいく。

 今回は割愛するが特許情報はアイデアの宝庫であり、これを駆使することで、現在取り組んでいる課題に対して、まったく新しい次元での解決策を見出すことが可能となる。

 


 4.パテントマップ症候群からの脱却〜まとめ
 特許からどのような情報が得られるのだろうか。またそのために、「パテントマップ」は必要だろうか?そもそもパテントマップから何が分かるのか。日々いろいろな質問をいただく。

 ここで再び図1.の出番である。事業活動にとって必要な情報は、その工程にそって考えれば「市場=顧客の情報」「課題を解決する新たな技術の情報」である。あるいは、ポーターの「5つの力分析」を使えば、「競合他社の情報」「競合技術の情報」「サプライヤー・パートナーの情報」が浮かび上がる。「内部情報」も必要かもしれない。いずれにしても、この5つか6つの情報をいかに早く効率的に得るか、が要求されているに過ぎないのである。そしてその大半は、高い精度で、特許情報から効率よく入手することができる(図5.

 


 事業を推進する上で必要とされているのは、見た目はきれいだが詳細不明な統計表を作る能力ではなく、必要最小限の情報を効率よく入手することであり、そのための手法とツールで各人を武装することが、ビジネスを成功へ導く。これこそがビジネスのための知財教育である。情報はあくまでも情報であって、いち早くアクションにつなげなければ価値はない。
 また、パレートによれば、「社会の富の80%は、20%の人口に偏在している」のであり、「80%の情報は、20%のソースに偏在している」ことは明らかである。そしてそのコアな情報を抽出する方法、また、コアな情報を握っているキーマンへコンタクトする手段を与えてくれるのが特許公報である。

 ここで必要とされているのは「Intelligence」であり、絵を作る能力ではない。絵は結果であり、仮説に基づいたデータ収集・分析・考察の結果を示すものである。絵を作ってから判断するのではなく、絵を作ること自体が、判断の立証過程なのである。したがって、冒頭の質問の一つに答えるとすると、「他人に自分の得た結論を説明するために、必要であれば、自分の仮説と検証の結果を図にまとめる。特許情報を分析して得られた場合にはそれをパテントマップと呼ぶ場合もある」ということになる。とりあえず作る、ことには何の意味はない。

 ぜひ一度既存のパテントマップから離れて、自分の仕事に必要な情報が特許公報から取れないか、あるいは自分の仮説を立証するデータが特許情報から出てこないか、まずは特許情報そのものにあたっていただきたい。何度も言うが、仕事さえ進めば、あるいはもっと言うと結果さえ出れば、きれいな絵を作る必要は全くない。
 必要なのは「仮説」「検証」であり、それに基づいた「迅速な行動」である。特許情報分析は極めて低コストで迅速・確実な手段であり、それを活用し戦略立案とアクションができる人材=事業を推進できる人材の育成、および必要なツールとリテラシー教育を提供するのが我々の使命である(図6.

 




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第3回 [ 機会の発掘 ](2009/5/12)



1.機会の発掘
 今回はビジネスの第一歩となる「機会の発掘」を取り上げて、特許情報分析の活用について紹介したい。
 特許情報から読み取ることができる「機会」の情報の一つに、普段弊社がセミナー等で取り上げている「技術マーケティング」情報(シーズ技術の用途情報)があるが、今回は、もうひとつの側面である「ある技術分野や顧客の抱えている課題」を抽出する手法を取り上げる。

2.「課題」はビジネスチャンス
 よく「顧客クレームはビジネスチャンスである」と言われる。クレームという顧客の声の中に、ニーズに関する重要な情報が含まれていると考えているのである。ここには「課題」はビジネスチャンスであり、「課題解決」こそがビジネスの本質である、という考え方が含まれている。
 一方で、特許や発明の世界では「必要は発明の母」といわれる。これも、「必要=課題」と考えると上記のビジネスの世界の話とつながってくる。「発明のプロセス」=「課題解決」=「ビジネスの本質」なのである。よく考えてみればこれは当たり前で、「課題」というのは「現実と理想のギャップ」であり、それを解決することは一方では「ビジネスチャンス」を生むことになり、それがいわゆる「技術的な創作」であれば、特許へとつながるのである(図1.)。

 

 そうなると、「どういう課題を解決するべきか」ということが重要となってくる。ビジネスの言葉で言うと「ニーズ」ということになる。これはつまり「どういう課題が、解決する価値のあるものか、その価値の高いものか」という「問い」である。ひとつの仮説として、「解決する価値の高い課題」は「注目されている課題」と考えることができる。さらに深掘りすると「様々な観点から取り組まれているがなかなか解決しない課題」=「根が深い課題」が、解決する価値のある問題であると考えることができる。
 少し課題の定義にこだわったが、これには理由がある。よく、「課題が設定できれば、仕事の大半は終了している」と言われる。つまり、「課題設定」が一番重要であり、技術者のみならずビジネスマンは皆「課題設定能力」を問われているのである。もちろん、「設定した課題の妥当性」も検証する必要がある。

3.特許情報からの「課題」分析〜客観的なデータが教えてくれるもの
 たとえば、あなた事業責任者(もしくは企業経営者)となって、LEDメーカーに製造技術や材料を供給する事業に新規参入しようとしていると想定し、顧客のニーズは何か、それにどう応えるか、探っているとする。LEDが照明用途として実用化されるのはいつごろか、そのための課題は何か、検討はどこまで進んでいるのか、そういったことを知る必要がある。
 以下で、ごく簡単な特許情報分析を用いて、上記の「問い」に少し答えてみたい。LEDに関する特許は膨大な件数であるため、今回はある企業に絞って分析した例を図2.に示す(母集団は、1993年〜2008年末公開までの約650件)。

 

 図2.からは、以下のことが分かる。
  @照明用途への出願とほぼ並列して、「発光効率」「高出力」という課題が上がっている。
    つまり、照明用途を目指して「発光効率の増大」「高出力化」を進めてきたと思われる。
  A信頼性と放熱性にも強い関連が見られる。
    つまり、発熱による温度上昇がLEDの信頼性に大きく影響していると推察される。
   (LEDに詳しい方であれば、実は「発光効率を増大」することが「熱」問題も同時に解決することも理解いただけるだろう。LEDにおいて、光として取り出せないエネルギーは、「熱」になるためである。)
  B照明用途として要求される、色に関する課題は新しい課題である。
    まずは、必要な明るさを確保することに注力して開発が進んできた。

 また、「発光効率」に対する解決策としてどのような解決策が提案されているのかをテキストマイニングにより分析したのが図3.である。

 


 「実装」「蛍光体」「ドーム状の保護カバー(レンズ効果を狙ったものと思われる)」のほかに、「凹凸構造」といった言葉が上がっている。たとえば図4.のリストに示すように、これまでは実装により取り組まれてきた「発光効率」の向上に対して、近年では微細な表面「凹凸構造」を用いた手法が検討されていることが、特許情報から読み取れる。

 

4.判断に必要な情報をどう収集するのか〜多面的な活動の重要性
 実際に下名自身、前職時代に微細加工技術の応用先としてLED分野の分析を行ったことがある。その際には、「発光効率」という課題が重要なのではないか、その課題の解決策として微細加工が大きく取り上げられるではないかという仮説を立て、検証を行った。LEDメーカー各社の発光効率向上への取り組み、その課題に具体的にどのように取り組んでいる(=解決策)のか、微細加工技術以外の解決策にはどのようなものがあるか、等を分析し、微細加工技術がLEDに与えるインパクト(ニーズの大きさ≒マーケットの大きさ)を推定した。また、特許情報分析に基づき、抽出された企業・開発担当者には下名自身が直接ヒアリングを行い、裏付けを取った上で事業方針の策定を行い、実際に事業として同業界に参入(微細加工装置の販売)した。
 今でこそ、LEDが照明用途に使われること、そのための高輝度化が着実に進められていることに疑いを持つ人は皆無であるが、下名が分析に取り組んでいた2006-2007年当時は、専門家(特に技術者)の中にもLEDが照明として用いられる可能性は当面(10年程度)無いとの意見もあり、判断に迷った。しかし、上記のような特許情報分析とヒアリングを通じて、この分野の有望性と早期の実現を確信し、事業参入の判断を行った。自分の手で客観的なデータを集め、必要なヒアリングをフェアに行うことの重要性を痛感した一件であった。人間の思い込みというのは恐ろしいものであり、「自分の専門分野に関する仮説ほど、疑ってかかる必要がある」といわれるが、全くその通りである。
 自分の知らない分野のことは分からない、しかしながら知りすぎた専門家も危ない、となると、客観的情報を出発点として自ら事実を収集するしかない。そのための「指針」を、特許情報分析は与えてくれる。

 <謝辞>
 本文の特許情報分析には、特許情報分析ソフト「CSVAID」(中央光学出版梶jを用いた。


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第4回 [ 無限に発明を生み出す方法 ](2009/5/19)



1.「発明」とは何か〜「特許」から見る発明
 皆さんは「発明」といわれて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。「誰も思いつかないような素晴らしいアイデア」「ひらめき」「セレンディピティー」等という言葉が出くるのかもしれません。しかし、実際に「特許」になっている(もしくは申請されている)「発明」を見てみると、その多くは「既存の技術の組み合わせ」であることに気づきます。
 少し考えて見ればこれは当たり前で、「特許申請をする」ということは「権利がほしい」ということで、その権利を何に使うかといえば「ビジネスの保護」。つまり、起点が「ビジネス」であり、第3回で取り上げたように、いわゆる「課題解決」なのである。「課題」を「解決」できる手段がいくつかあるとして、ビジネスとして始めるなら「できるだけ既存」の物で済ませたい。既存の技術一つでは解決しないから、ほかの技術も持ってきてくっつける。そうすると「発明」となるわけである。有名な「発明」に「消しゴムつき鉛筆」があるが、まさに「結合」の典型である。
 上記をまとめると、以下のようになります。(実際には「多くの場合」という接頭辞が必要かもしれません)
  @「特許」の世界において、「発明」は「課題解決」の構図で生み出される。
  A無から有を生み出す作業ではなく、「既存技術」の結合である。
  B「特許」の目的はあくまでも「ビジネスの保護」であり、特許化を目指した発明もこの目的に則って生み出される。

 では、なんでもくっつければ「発明」であり、それは「特許」になるのか。答えは「No」。「発明」には、もちろん「特許」になるものとならないものがある。特許になるかどうかは、非常に単純化して言うと次の視点で決まる。
  @全く同じものがすでに広く知られている(「公知」と言われる)ものは特許にならない。
    これは特許になっている場合だけでなく、出版物(論文など)等に掲載されたものも含む
   (「新規性」と言われる要件)。
  Aその分野の技術者(「当業者」と言われる)が、容易に思いつく組み合わせは特許にならない。
    つまり、同一技術分野内や近い技術分野での技術の組み合わせは、特許として認められない
   (「進歩性」と言われる要件の一部)。
 よく言われる3要素としてあと一つ「産業上の利用可能性」があるが、これは実務上でてきたアイデアであれば、ほとんどの場合満たすはずなので気にする必要はない(図1.)。

 

 上記の内容から、一つの結論が浮かび上がる。
 それは、「発明」とは「新結合」であるということである。
 ここで単に「結合」ではなく「新結合」とした理由は、「特許」として認められるか否かを考えた場合に、「これまでになく(新規性)」「周囲の技術者が容易に思いつかない(進歩性)」ことが必要だからである。
 既存技術の課題をブレークスルーするための新しい技術を開発し、それを権利化しビジネスを保護していく(図2.)、ということを考えた場合に、Key になるのはこの「新結合」となる。

 

2.特許情報活用と「新結合」
 上記の事実に気づけば、実は「発明」というのは実はものすごく簡単な作業である。慣れれば、次から次へと「強制的」に生み出すことができる。もっとも次の日に熱ぐらいは出るかもしれませんが・・・(いわゆる「知恵熱」ですね。)
 では、どうやるのか。
 新結合を生み出すには、「異分野」の技術を結合させる必要がある。平たく言うと、既存の技術分野で生じている課題をまったく別の分野の技術を応用して解決することができればよいのである。これは、単に特許という点だけでなく、技術的な優位性の確保という点からも、競合他社に差をつけることができるという点で、有効な視点である。しかし、異分野の技術をどうやって探してくるのか。大学の先生に片端から電話をする、という人もいるであろう(下名も以前はよく使っていた手法である)。しかしながら、専門家はそれぞれの専門には強いが、それをまたがる問題には必ずしも強くない。そういう経験をした人も多いのではないだろうか。最後は、自分の「頭脳」で「新結合」を生み出すしかない。そのための材料はどこにあるのか。
 その答えの一つは、「特許情報」にある。つまり、すでに出ている特許がすばらしいヒントになるのである。「特許」データベースは、おそらく「最もよく整理された技術知識データベース」の一つであろう。これに関し、下名は「Googleは、スマートではないやり方ではあるが、確実に人工知能に近づいている」という「Web2.0」で有名な梅田望夫氏の発言を引用させていただくことがある(図3.)。私が機械工学を学んだ1990年代には、機械工学の主流は内燃機関の燃焼解析を中心とした流体力学と人工知能であった。当時の人工知能に関する考え方は、人間の意思決定や判断のプロセスを模した「アルゴリズム」をいかに創作するか、というものであった。それから10年、今度はハードウェアの驚くべき進歩によって、検索システムが世界中のデータを整理して表示してくれるようになった。どちらが正しいか、というような単純な問題ではないが、大量のデータを高速で整理する手法により、人間の知能の一部がたった数万円のPC上に実現されていることは事実である。そして我々はそのアルゴリズムを知る必要が、全くないのである。
 

 以上のような歴史を振り返ってみた時に、「発明」についても同じことが言えるのではないだろうかと考えている。「人間の発明のプロセス」を再現する「アルゴリズム」を開発するのではなく、「大量・高速のデータ処理」によって、「発明プロセス」の一部がPCで実現できないか。そんなことを考えている。

3.「新しい発明原理」に基づく発明の事例
 前置きが長くなったが、一つの試みとしての事例を紹介したい。今回取り上げる技術は下名が前職時代に取り組んでいた「ナノインプリント」技術である(図4.)。ナノインプリント技術は、その本質は「微細な金型を用いた成型加工」であるため、金型にまつわる様々な問題(作成法、洗浄法など)が課題として挙げられている。今回はその中で、金型のみならずプロセスにも関連する課題として「離型」という概念(たとえば「離型性の向上」)を取り上げてみたい。

 


 ナノインプリント技術において、離型性の向上についてはすでに様々な取り組みがある。たとえば典型的な事例として「金型にフッ素樹脂をコーティングする」「被成型材料にフッ素樹脂材料を用いる」というものがある。これらは、概念としてはいずれも「表面エネルギーの小さな材料を用いる」というカテゴリーである。では、他に有効な手法はないのか、異分野の知識が活用できないだろうか。
 例えば、「既存の特許」を分析してみてはどうか。「離型」というキーワードだけで母集団作成を行い、特許情報分析ソフトで分類してみたものが図5.である。

 

 ナノインプリント技術はもちろんであるが、実に様々な分野で「離型」という言葉が使われている。今回は割愛するが、弊社での様々な活動により、実際にこのようにして異分野で同じ概念を扱っている技術を拾い出し、「新結合」により有効な発明を創出できることが分かっている。こういった手法を用いることで、難しい発明の原理を取り扱うことなく、誰にでも「発明」を生み出すことが可能である。

 <謝辞>
 本文の特許情報分析には、特許情報分析ソフト「CSVAID」(中央光学出版梶jを用いた。


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第5回 [ 知財部と弁理士の役割 ](2009/6/2)



1.そんなの特許にならない
 技術者が発明を提案する際に、よく聞く言葉です。この一言は、エンジニアの特許に対する関心を、見事に打ち砕きます。
 私もエンジニアとして数多くの知財部の方々、弁理士の先生にいろいろな発明の特許化をお願いしてまいりましたが、ほとんどの場合の第一声は、

「こんなのは他にもたくさんあります、特許になりません!」

 でした。あまりによくいわれるので、ある弁理士の先生に出会うまでは、皆さん「特許になりません!」と言われるものだと思い込んでいました。そして、私の特許への関心は限りなく「ゼロ」に近い状態でした。

2.どうすればビジネスに使える権利が取れるか
 しかし、自分で事業をやるようになってから、ある弁理士の先生に言われた以下の一言、「このままでは弱いですが、こういう点についてもっとアイデアをふくらませることはできませんか?そうすれば特許になると思いますよ、いや、して見せますよ。」この、最後の「いや、して見せますよ。」というのが、目からウロコでした。
 そうです、特許を出したいと思っている人は、事業の運営に必要な権利をなんとかして確保したいと、知財部の方々や弁理士の先生に無理を承知で「依頼」してくるわけなのです。知りたいのは、「どうすれば権利になるか」ということなのです。
 弁理士の先生との会話で「どういう事業にするつもりですか?XXXのようなビジネスの可能性は有りませんか?どういう形でこの技術が使われるようになり、その時に必要な権利はYYYですね。」と、今後の事業を考えるヒントまでもらえる場合もあります。こうなると、単に権利を取るかとらないか、という話だけではなくビジネスプランの相談になってきます。

3.権利からビジネスへ
 逆にいえば、特許をきっかけに「必要な権利はなにか」「そもそもどういうビジネスがやりたいのか(儲かるのか、等)」を改めて考え直すことができるのです。発明から特許に至るまでのプロセスには、このような重要なマイルストーンが含まれているのです。
 ですから、アイデアを持ってきたエンジニアに「こんなの特許にならない」と言いたくなる気持ちは少し脇へ置いて、「なぜそれを特許にしたいのか」「特許にする必要があるのか」を確認しましょう。アイデアを発明提案書や特許明細書にする、という行為は、うまく導けばエンジニアがビジネスを考えるきっかけになるのです。
 起業するのか、大企業で新事業をやるのか。中小企業かベンチャー企業か。発明者の置かれた立場によって、どのような特許を出すべきか(出さざるべきかも含め)は常に変わります。「権利」というのはビジネス上の参入障壁の一つなのですから、経営上の高い視点からアドバイスがほしい、というのがビジネスエンジニアの本音なのです。


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第6回 [ 特許になる発明かどうか ](2009/6/16)



1.エンジニアがつまずく特許用語「新規性と進歩性」
 「これはいいアイデアだ、特許を申請しよう」となった際に、気になるのが「本当に特許になるのだろうか?」という点ですね。我々もよく「このアイデアは特許になりますか?」と聞かれることがあります。
 その際の説明として、ついつい「私の知る範囲では似たようなものはなかったと思いますので新規性はあると思いますが、おそらくXXXとYYYというのはそれぞれ実用化されていますので、その組み合わせとなると進歩性が・・・」などと言ってしまうのですが、果たしてこの「新規性」と「進歩性」、意外と発明者の方に理解していただくのが難しいのです。アイデアが特許として認められるには「新しいこと」と「現状の技術水準より進んでいること」の二つが大きな要件であるというだけの話で、実はそんなに難しいことではありません(図1)。
 振り返ってみますと、私自身もエンジニアとして特許を出していたときに、さほどそれらを意識せず、「そういうのを判断するのは弁理士の先生の仕事だから」と考えていたことからしますと、無理もない感じもします。
 しかしながら、アイデアが「特許」として認められるには、この二つの概念は避けて通れませんので、少し頭の体操をしてみましょう。これらの概念をうまく利用することで、権利取得しやすい発明を、容易に生み出すことも可能になります。

 


2.新規性〜すでに同じものが知られているか?
 まず「新規性」です。これは、「客観的に新しいこと」、もう少しわかりやすく言うと「すでに同じものが知られていないこと」という意味になります(図2)。ごく簡単な概念なのですが、この「同じもの」というのが曲者ですので、簡単な問題で考えてみましょう。

 


 以下、セミナーでいつも用いる例題です。

【問題】「以下の3つは、それぞれ新規性はあるでしょうか?」
 前提:「青い」「丸い」「お皿」のみが公知であるとします。
 1)「青い」「丸い」「皿」「取手つき」
 2)「赤い」「丸い」「皿」
 3)「青い」「丸い」「食器」
 理由も含めて、考えてみてください。

【解答例】
 <考え方>
 非常に単純化すると、「発明」を、「構成する要素」に「因数分解」しそれぞれの要素が、公知の事実(今回は上の「前提」で与えられた情報)にすべて含まれていれば新規性はない、と考えることができます。

 1)「青い」「丸い」「皿」「取手つき」
 ・答え:「新規性有り」
 ・理由:新しい要素「取手」が付与されている

 2)「赤い」「丸い」「皿」
 ・答え:「新規性あり」
 ・理由:要素の一つである「色」が異なる

 3)「青い」「丸い」「食器」
 ・答え:「新規性無し」
 ・理由:「食器」は「皿」の上位概念であり、要素として新しいものではない。

 <補足>「上位概念」
 「食器」の中には「皿」が含まれます。このような関係を、(食器は皿の)「上位概念」である、といいます。

 いかがでしたでしょうか?

3.進歩性〜組み合わせ、用途と限定
 次に「進歩性」です。これは、「当業者が容易に思いつかないこと」(図3.)とよく説明されます。つまり、単に新しいだけではだめで、他の人が簡単に思いつかないことでないといけない、という条件です。ちなみに当業者とは、当該技術分野に携わる人、という意味です。
 新規性の時と同様に、簡略化した問題をもとに考えてみましょう。

 


【問題】以下の事例、それぞれ進歩性があるでしょうか?
 前提:「青い」「丸い」「お皿」と「赤い」「四角い」「コップ」が公知の場合
 1)「赤い」「丸い」「お皿」がカラス除けに抜群の効果がある。
 2)「四角い」「コップ」で陶器製のものは保温性に優れる。
 3)「赤い」「四角い」「お皿」
 理由も含めて考えてみてください。

【解答例】
 <考え方>
 非常に単純化して説明すると、進歩性の代表的なポイントは「新規な用途」「限定による顕著な効果」「異分野の組み合わせ」です。

 1)「赤い」「丸い」「お皿」がカラス除けに抜群の効果がある。
 ・答え:進歩性有り。
 ・理由:通常のお皿としての用途以外の新しい用途、という点で進歩性があります。

 2)「四角い」「コップ」で陶器製のものは保温性に優れる。
 ・答え:進歩性有り。
 ・理由:材質を陶器に限定することで、保温性というコップに求められる性能が向上しており、進歩性があります。

 3)「赤い」「四角い」「お皿」
 ・答え:進歩性無し。
 ・理由:単に二つの公知の事例を組み合わせただけで、進歩性は有りません。ただ、同じ組み合わせでも、まったく異なる分野の技術の組み合わせであれば、進歩性が認められる可能性もあります。通常は結び付けようと思わない(できない)ものを結びつけた結果、大きな効果が得られれば進歩性が認められます。

 ご自分が何かアイデアを思いついた、あるいは新しいアイデアを考えて特許化したい、という際に、上記の観点を参考にしてみてください。

4.進歩性を調べる、調べて補強する
 以上、「新規性」「進歩性」の概念を見てきました。特許に代表される「権利」取得の目的が、ビジネスにおける「障壁」作りであるとすると、「新規性」「進歩性」をクリアしやすいアイデアを常に探していく、ということも一つの手段です。特に「進歩性」の概念には、いわゆる「新結合」と言われる異分野技術の組み合わせ、ある技術の新しい用途開拓(=異分野の技術を持ってくる)が含まれており、これらにそってアイデアを創出することで、権利化しやすい発明を優先的に創出することができます。
 特許調査、というとアイデアを出した後に調べて特許になるかどうかを「判断」する、と考えがちですが、着想を得る段階で調べることで、アイデアも出やすくなり、また同時に意図的に「権利化しやすい」アイデアを出すこともできるようになります。



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第7回 [ 発明から特許へ〜権利取得のために ](2009/6/30)



 前回取り上げたような手法を用いると、新しいアイデア=「発明」は面白いぐらいどんどん出てきます。しかし、それらの「発明」を特許として出願するためには、さらにいくつかの作業が必要となってきます。今回は、「発明」と「特許」の間にある溝を埋める作業をいくつか取り上げてみます。

1. 発明の本質を把握する〜いったん上位概念化する
 まず出てきたアイデア(以下「発明」)について、「何が本質なのか」を抽出する作業が必要になります。何がなぜ新しいのか・素晴らしいのか、という風に考えてもいいかもしれません。例えば、以下の手順に沿って考えてみましょう(図1.)。

  @ 発明の「効果」を言葉で表現する
  A その技術効果がどのようにして実現されるのかを、「作用や動き」として記述する
  B その作用や動きを構成する要素(部品・モジュールや特性)をリストアップする
  C リストから「必須の構成要素」のみを抽出する(不要な構成要素を省く)
  D 「必須の構成要素」の集まりとして発明を特定する

 こういわれてもピンとこない、かもしれませんので一つ例題をやってみましょう。例えば、これまでの靴の靴底はすべて革であったとします。課題として、「疲れやすい」ということがありました。そこであなたがそれを解決するために「ゴムを靴底に配置した靴」(要するにゴム底の靴)を発明しました。その効果は「疲れない」ということになります。ここまではさほど難しい話ではないでしょう。
 この「発明」を、権利を意識した形で広げていく作業が「特許」への道のりです。そのためには、まず「発明の本質」を把握し、その本質を幅広く具体化することが必要です。再度「課題」に立ち返って、そもそも「なぜ革の靴底が疲れる」のか、「ゴムの靴底であればなぜ疲れないのか」を考えてみます。

  @ 革の靴底が疲れる理由:歩く際の衝撃が足にダイレクトに伝わるから、地面の凹凸を吸収してくれないから、等
  A ゴムの靴底が疲れない理由:衝撃を吸収してくれる、凹凸を緩和してくれる、等

 ここまでくれば何が本質なのか、わかりますね。つまりゴム底の本質は「衝撃を吸収」することであり、あるいは/および「凹凸を緩和」してくれることなのです。もちろん他にもあるかもしれません。
 以上を整理すると、今回の発明「ゴムを靴底に配置した靴」は、実は「衝撃を吸収する材料を靴底に配置した靴」「地面の凹凸を緩和する材料を靴底に配置した靴」と言い換えることができそうです。これは、よく言われる「上位概念化」という作業です。発明の本質をとらえる、ということはその発明の作用の上位概念を探す作業になります。

2.発明の拡大と請求項への落とし込み〜さらに本質を絞り込む
 上記作業で、上位概念にたどりつきました。次はそれを再度具体化し、「発明を拡大」していく作業になります。なぜ拡大になるのかというと、「ゴムの靴底」の本質を特定しそれと同等のものを把握していくことで、最初に考えていた「ゴムの靴底」以外の発明も抽出し取り込んでいく作業だからです(図2.)。
 では「衝撃吸収」「凹凸吸収」という作用を実現するゴム以外の具体的な機構やモノ、つまりゴムと並列になる要素はなんでしょうか? それは、ゴムとどう同じでどう違うのでしょうか? ゴム以外はダメなのでしょうか?

  @ ばね→均一な吸収ができない、反発が大きい
  A スポンジ→耐久性なし
  B エアキャップ(プチプチ)→耐久性なし
  C こんにゃく→耐久性なし


 いろいろ出てきましたね。これらより、ゴム底の果たす役割が以下のようなものであることがわかります。

  @ 地面から受ける衝撃を吸収
  A 地面の凹凸を吸収(応力を均一にする)
  B 耐久性
  C 復元性
  D 均一に吸収

 これらを踏まえて、今回の発明の本質を改めて定義すると以下のようになります。
「足に加わる衝撃を均一に吸収し、足が地面から受ける応力を均一にすると共に、耐久性、復元性を有する衝撃吸収材を靴底に配置した靴」
 1.で示した概念から絞り込まれていることにお気づきでしょう。つまり、いったん上位概念化した後に、再度具体化して比較検討することでその発明の「本当の」本質にたどりつくことができるのです。
 そして、これがそのまま請求項の第一項目となります。以下の請求項は、例えばさらに材料を具体化した「・・・衝撃吸収材としてゴムを用いた靴」のようになり、あるいは衝撃吸収性等の項目を数値的に定義して「・・・??N/m3以上の衝撃吸収能力を持つ材料を用いた靴」のような形も可能です。このあたりは、さらに掘り下げて本質が何なのか、また実際にどの部分を権利として押さえる必要があるのか、等を考慮して決めていくことになります。細かいことはよくわからないが、なぜかゴムがいいのだということもあるでしょうし、エネルギー吸収量がある範囲であればよい、その典型がゴムなのだという場合もあるでしょう。実際には、よくわからないのでいくつかの切り口で請求項もしくは実施例を構成しておく、という場合も多いかもしれません。

3.発明の詳細な説明と実施例の意義
 通常はここまでで終わってしまうのですが、せっかくなのでもう少し広げられないかと考えてみましょう。例えば、却下されたばねやスポンジなどについても、耐久性や復元性、衝撃の均一吸収性を持たせる工夫等も考えてみるとよいでしょう。
 まず、IPDL(http://www.inpit.go.jp/info/ipdl/service/)等の特許データベースを用いて「ばね*均一」「スポンジ*耐久」などでキーワード検索をかけてみましょう。ばねを用いて均一に衝撃吸収ができるよい技術があれば、引用すればよいのです。ある程度実現可能であることが明らかな場合には、請求項に材料の限定としてゴムと並列で入れておいてもよいでしょう。あるいは、少なくとも発明の詳細な説明や実施例に入れておくことで、「衝撃吸収材を用いた靴」という上位概念が否定された場合に、ゴム以外の材料を用いた靴について権利主張の可能性が出てきます。こういった作業を通じて、当初の発明を補強し、権利取得の可能性を広げていくことが「特許」への道のりなのです。

 <おまけ>
 今回のコラムでは、紙幅の都合上「請求項の構成の仕方」等については触れておりません。関心の高い分野だとは思いますが、関連書籍も出ておりますのでそちらを参照いただければ幸甚です。手っ取り早く請求項の構築の仕方を学びたい、という方は身近な分野の特許について、請求項を分析してみるとよいでしょう。例えば「Claymore」という便利なソフト(フリーソフト:http://www.djsoft.co.jp/products/claymore.html)があります。本ソフトに請求項を入力(コピーペースト)すれば、その階層構造を一発で把握することができます。いくつかの特許について試せば、請求項がどのように組み立てられているのか、雰囲気はつかんでいただけると思います。



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第8回 [ 特許にすべきか否か〜その判断基準は何か ](2009/7/14)



 第6回、第7回とアイデアの創出〜特許にいたる作業に触れました。しかしながら、すべてのアイデアを特許出願すればいいのでしょうか。実は、出願しない方がいい場合もあります。今回は、そもそも何のために特許を出すのか、ということを踏まえて出願すべきか否かの判断基準について考えてみます。

1.出願すべきか否か〜特許出願のメリットとデメリット
 ではどういう場合に出願をしたほうがよく、どういう場合には出願しない方がいいのでしょうか? その判断基準はどこにあるのでしょうか? そのためには、まず「なぜ特許出願をするのか」を考えてみたいと思います。例えば、

  @ 他者に邪魔されずにその技術を使いたい
  A 他者にその技術を使用させたくない=邪魔したい
  B 使えるのは自社だけだと知らしめたい
  C ライセンスフィーが欲しい
  D 参入障壁としたい

 といった理由が考えられそうです。大きく分けると「自社ビジネスの保護」「他社への権利主張」、およびさらに一歩進んで「他社への権利譲渡(実施の許諾)」といったところになるでしょう。これらが、特許を取得した際のメリットと言えそうです。
 ではデメリットはなんでしょうか?(図1.

  ・費用がかかる
  ・早期(1年半)に情報が公開される

 が考えられます。つまり「お金を払って」「情報公開=模倣を可能に」しているのです。これは特許公開制度の本来の趣旨である、「独占権を付与する代わりに、その内容を公開する」から考えると当たり前のことですが、注意する必要があります。



 これを踏まえると、以下のような場合には、特許出願すべきかどうか再考した方がよいと言えます。

  @ 保護してもらう必要がない場合=特許以外の保護手段(秘匿含む)がある場合
  A 他人が排除できない場合=他社へ権利主張が難しい場合

 例えば、自社のみで利用し販売しない実験装置、製造上のノウハウ・条件などは、模倣されても他社内部で実施されている場合には立証困難ですので、あえて出願すべきではないと言えます。

2.特許権以外の保護方法〜秘匿と先使用権の活用
 では、特許権以外で、あなたのアイデアや知識を保護するための有効な手法は何があるでしょうか? ここでは、特に問題となりやすい「ノウハウ」を取り上げて、考えてみましょう。ノウハウとは「手続き的知識」を指します。いわゆる「方法」およびそれに関する知識、と考えてもよいでしょう。
 ノウハウは、模倣されても立証が困難であることが多いため特許化戦略には向きません。その場合には、@秘匿することで模倣による他者の実施を防ぎ(独自に考えついた他者の実施を妨げることはできませんが)A自己実施を可能とするために先使用権を確保する(万が一、他者が特許取得し権利主張してきた場合に備えて)、ことが考えられます。そのためには、「秘密として管理しておくこと」と「自己の先行実施を立証できるようにしておく」という二つの作業が必要となります。
 混乱しがちなのですが、「秘密として管理しておく」ことは、他者の模倣(実施)を妨げることです。他方、「自己の先行実施を立証できるようにしておく」ことは、自己の実施を確保するためであり、それぞれ目的が異なります。
 法律的に「秘密として管理されている」と認められるには、大きく分けて以下の二つの要件があります。

  @ 保有者の許可なく、「秘密にする義務のない人」に知られていないこと(非公知性)
  A 「客観的に」秘密として管理していると、「周囲が認識できる」 状態にあること(秘密管理性)

 ただ、すべてを厳重に秘密管理することは管理コストを徒に増大させることになり、好ましいことではありません。したがって、情報をランクに分けて管理をするとともに、最低限自己実施ができるようにしておく(=自己の先行実施を立証できるようにしておく)という考え方も重要です。
 この「自己の先行実施を立証できるようにしておく」ことは、一般的に「先使用権の確保」と呼ばれています。ラボノートをつけているエンジニアの方なら、説明を受けたことがあるかもしれません。ラボノートのほか、ノウハウの書かれた書面やマニュアル、図面、製品、工場や装置・作業などを撮影したDVDなどを「公証人役場」へ持参し、捺印して封をしてもらうことで「自分たちがある時点で実施をしていた」ことを立証することができます。最近では、電子認証やタイムスタンプ(http://www.dekyo.or.jp/tbf/)を用いるところも増えています。
 ノウハウ以外でも、上記で挙げた工場の設備や図面等は、特許化ではなく秘匿および先使用権の確保、が有利だと一般的に考えられています。

3.まとめ〜出願すべきか否かのフロー
 最後に、特許化を目指して出願すべきか否かについて、その考え方をまとめてみましょう。この場合、特許出願したくない理由を考えてみるとわかりやすくなります。例えば、

  @ 「他社には実現不可能」な場合
     製品を見ただけでは分からず、秘密にできるなら「秘匿」する。
  A 「立証困難」な場合、もしくは「模倣容易」な場合
     知られたくないので、秘匿。万が一の場合を考えて他者から権利主張されないように「先使用権」を確保する。
  B 「進歩性が低い」場合
     権利化できない可能性が高いので、自分たちが使えればよいと考え「先使用権」を確保する。

 となります。その他のケースも含め、下図(図2.)にまとめておきます。





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第9回 [ 技術者のための技術契約講座〜オープンイノベーションのために ](2009/7/28)



1.法務にお任せだから何も知らなくてよい?〜エンジニアに必要な契約知識
 エンジニアにどこまで契約の知識が必要か? よく聞かれる質問です。企業において、法的リスクについて判断し、法務面での最終責任を負うのは法務・知財部門であることは言うまでもありません。一方で、特に研究開発の現場における対外交渉で、最初の窓口になるのは、エンジニアであることが多いのも事実です。窓口になったエンジニアは「入口でボタンをかけ違えると、とんでもないトラブルになる」ということをよく肝に銘じ、知財・法務部門に適切に情報を伝達し、うまく働きかける必要があります。
 と言っても、実際には契約法務の基本的な考え方といくつかのケース、注意すべきポイントを頭に入れておけばそんなに難しいことはありません。それどころか、エンジニアが積極的に役割を果たすべき部分もあります。オープンイノベーションの時代と言われて久しい今日この頃、ポイントを押さえて無用な恐怖心をなくし、外部と良い協力関係を結べるようになることで、おのずと成果も出るようになるでしょう。リスクを管理しながら成果を求める姿勢を身につけるために、ぜひ契約について理解しておきましょう。

2.トラブルを想定して決めておく〜性善説か性悪説か
 例えば共同研究を行った際に、こういったことで困ったという事例がよくあります。
 @ 成果の帰属と貢献度
    大きな成果が出た、今後のビジネスを見据えて特許出願をしたい。
    持分を決める際に、双方が自分たちの貢献の大きさを主張して譲らない。
    例えばサンプル提供はどの程度の貢献なのか?
 A 不実施補償
    技術的に確認したいことがある、でも自分たちでは実施しない。
    研究にはかなり貢献をしたので「不実施補償」を要求したいが、なかなか相手が認めてくれない。
    共同研究の成果を直接実施しない場合に、つぎ込んだ研究費に見合うリターンをどう得るのか。
 B 共同事業
    共同事業を前提とした契約を結んでいたが、事業環境が変わり共同事業を進めることができなくなった。
    自分たちの技術的成果は活用したいのだが・・・

 これらの問題には、法的な問題とお互いのビジネス関係の両方が絡んでいます。整理すると、以下のようになります。
 ・現場の担当者同士は円滑なビジネスを達成
 ・法務部門同士は部分的にはシビアな攻防

 シビアな攻防部分は、法務部門に任せて、それ以外の枠組みは現場の担当者同士で進めよう、というのが基本的な考え方になります。「万が一」「トラブルになるのでは」という前提で契約の項目を作っていきますが、その際に技術者は法務部門からの問い合わせに的確に対応し、関係継続に無理のない契約にまとめてもらうように協力する必要があります。
 上記のような例も含め、典型的な例をいくつか頭に入れておけばそう難しいことではありません。



3.各種契約のポイント
 研究開発を進める上で遭遇するケースを研究のステージに沿って想定すると、@秘密保持契約Aサンプル提供契約B業務委託契約C共同研究契約D共同出願契約、の5つの契約が典型的なものとなります。例えば「秘密保持契約」はサンプル提供を受ける・提供する、情報交換会、共同研究・開発の事前検討、技術導入のための検討など、相手との取り組みを検討する場面で結ばれる契約です。以下、それぞれの契約について、「どういう場面で」「どのような目的で」結ばれるもので「どういったことに注意すればよいのか」を簡単にまとめておきます。

@ 秘密保持契約
 ・場面:サンプル提供(または受ける)、情報交換会、共同研究/開発の事前検討
 ・目的:やり取りした情報やモノが第三者へ漏洩することの防止
 ・注意点:秘密保持義務の有無(むやみに結ぶと自らを縛る可能性有り)、情報の定義(何が秘密情報なのか)、秘密期間(短期では意味をなさないが、長期の場合にはお互いの事業の足かせになる)、秘密情報の利用用途/目的(利用に一定の制限を加えておく)

A サンプル提供契約
 ・場面:技術に興味を持つ先に対するサンプルの提供/受け取り時
 ・目的:サンプル提供/受け取り時にそのサンプル/情報/用途など取り扱いを制限
 ・注意点:サンプルの解析、サンプルの用途(目的外利用の制限、制限しすぎると研究が進まない?)、利用した成果・特許の取り扱い・完成した製品に関する事業(サンプルに基づいた研究成果は誰のもの?)

B 業務委託契約
 ・場面:研究開発の委託、商品プロトタイプ製造、パーツ製造、販売
 ・目的:他社に業務を委託する際、委託内容・成果・対価・検収条件を取り決める
 ・注意点:仕様と検収(仕様書の取交し、検収条件の確認)、納期(とペナルティー)、委託業務の成果の取り扱い(特許取得の制限、他社もしくは自社案件への応用の制限)

C 共同研究契約
 ・場面:研究初期?開発中期頃で研究開発を加速したい時
 ・目的:共同研究・開発に際し、その枠組みを規定するため
 ・注意点:役割分担(双方の役割分担をできるだけ明確に)、当初保有技術(何が成果/もしくは移転されたモノであるかを明確にするために)、成果の活用・派生技術・事業展開(たとえば共同事業を行う/行わない際のことを考えておく)

D 共同出願
 ・場面: 共同研究・開発の他、共同事業の成果を権利化する時
 ・目的:特許をはじめとする知的財産権を共同で出願するに際して締結
 ・注意点:役割分担(出願に至るまでの手続き、特にクレームの構成などをどのようにして決めるか)、貢献度(どちらがどういう形でどの程度貢献したのか)、費用負担(出願費用等、現時点および将来の費用負担)、改良発明(改良発明の所属)、特許の事業活用(事業活用しない場合の不実施補償も含む)

4.こわがらずに〜オープンイノベーションに向けて
 実際にどの契約においても、私自身、苦い経験があります。契約ですべてが解決するわけではありませんが、契約を結ぶという前提で関係を見直してみることで、リスクを洗い出し、対応策を考えるきっかけになることも事実です。自分たちの研究開発活動のリスクを自分たちで把握しておくことは、とても重要なことです。あらかじめリスクの所在と内容がわかっていれば、契約以外のリスク管理法を選択するなど、幅広い対応が可能です。オープンイノベーションが叫ばれて久しいですが、日本でも外部機関との積極的な協力関係を模索する企業が増えてきました。やけどをして逆戻り、ということがないように、しっかりとリスク管理をした上で、進めたいところです。

 まずは、「こういうケースでは、こういう契約を結ぶのだ」という認識を持つことから始めればよいでしょう。また、契約に関して法務部門と協力して作り上げていくという意識が必要です。契約書の文面ひとつで、関係が破綻してしまうことも多々ありますので、契約相手との関係をどのように持っていきたいのか、明確なイメージを法務部門に伝えることも重要でしょう。また、不要な契約を結んでしまったがゆえに、事業に支障が出るケースもあります。判断は法務部門にゆだねるとして、判断に必要なだけの十分で正確な情報や、研究開発部門としての意図を伝えることが、まず重要なのです。

 注)本篇執筆にあたり、
 「研究・製造・販売部門の法務リスク」 中央経済社 松下電工株式会社法務部編を参考にさせていただきました。


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第10回 [ 営業・マーケティングにおけるインテリジェンスと特許情報分析 ](2009/8/11)



1.企業分析と特許分析〜企業活動に必要なインティジェンス
 今回は、最近いくつかのクライアントと議論する中で話題として出てまいりました、企業分析のための特許情報分析について、少しふれたいと思います。知財関係者やエンジニアの方はもとより、企画担当者、経営者の方や営業マンにも、ぜひ知っておいていただきたいお話です。
 通常は企業分析というと、財務諸表の分析や製品ラインアップ、製品シェアの分析、ということが思い当たります。専門のデータベース会社も存在し、皆様日々ご活用だと思います。しかしながら、企業が実際にどのような開発を行っているのか、ある技術にどの程度投資をしているのか、どういう人材を抱えているのか、という情報はそういったデータベースにはなかなか出てきません。
 一方で、特許情報からは、開発担当者名および中心となる開発者、開発Grの構成、開発テーマとその課題、いつからやっているのか、共同研究先とその担当者名まで、情報として簡単に入手できることはよくご存じだと思います。特にこの「中心となる開発者=KEYマン」の情報が、皆様一番欲しい情報ではないでしょうか? 結局企業は人で決まるもの、中核となりチームを引張り開発を推進する人物を把握し、顧客とし、パートナーとし、あるいはマークすることが重要です。

同じ話をするなら(あるいは聞くなら)、KEYマンにコンタクトしたい・・・

 ですよね。その後の話の進み方が、全く変わってきます。では、特許情報からKEYマンをどうやって探し出しますか?

2.特許情報からの開発Gr分析、KEYマン分析
 ご存じのとおり、特許公報には発明者が記載されています。これをたどることで誰と誰が一緒に研究開発を行っているのかがわかります。研究開発部門ではよく、競合に対して以下のような研究開発Gr分析を行っています。これは「どの企業が、ある製品について、どのような役割分担(=テーマ、技術課題、人数・予算)で、いつごろから開発を行っているか」を分析するために、特許情報を整理した表です(例:図1-2 「CSV-Aid」による)。



 営業やマーケティングにおいて、ここまでの詳細なものは不要かもしれませんが、最近は、特許情報を自動的に分析してこういった図表を簡単に出力する機能を持ったソフトウェアも出回っているので、それらを利用するのも一つの手です。あなたが営業・マーケティング部門や企画部門の所属であれば、研究開発部門でこういったソフトを使っていないか、問い合わせてみるとよいでしょう。
 件数が少なければ関連特許公報にさっと目を通せば(主に発明者)、誰がKEYマンで主なテーマが何かはすぐ分かるでしょう。件数が多く、発明者も多い場合には少し面倒ですが以下の手順で、KEYマンとそのテーマを洗い出すことができます。

 @ ある企業の、特定の製品やテーマに関する特許母集団Aを作成する。
 A 発明者のランキングを取る。
 B TOP発明者Zの名前を追加して、母集団Aを絞り込む(母集団AA)。
 C 母集団AAにおける発明者ランキングを取る。ここで、TOP発明者Z以外の発明者(M-P)は、Zとの共同発明者である。
 D 発明者(M-P)の発明内容を公報(母集団AAの)から把握する。
    把握した内容は、発明者Zを中心としたチームでの研究テーマ群とその分担状況となる。

最近の特許データベースには、たいてい発明者のランキング機能は付いていますので、上記の作業はさほど面倒な作業ではないでしょう(図3 「CKS-Web」による)。



3.企業間、企業と大学の関係の調査
 発明者と同じように、出願人つまり企業名や機関名をたどることで、共同研究関係を確認することができます(図4)。企業にダイレクトにアクセスすることが困難な場合、まずは情報収集を行いたい場合などは、共同研究先の公的な研究機関にあたることから始めることもできます。これも、特許情報を整理する際には2.で記載した手法がそのまま使えます。



4.分析力を高める〜これからのインテリジェンス
 インターネットの登場により、情報の量は飛躍的に増大しており、今後もこの状況は加速度的に進むでしょう。その中で必要なことは「大量のデータから必要な情報を得る」ことと「大量のデータからある傾向や構造を把握する」の2点です。特許情報は、インターネット上の一般的な情報とは異なり、技術分類や発明者、出願人等のインデックスが整備された(かつ保証された)良質の情報源です。これを活用しないではないでしょう。
 これまでは、特許情報の活用というと、技術者が競合の把握するため、発明のヒントを得るため、といった点にとどまっていましたが、最近では営業やマーケティング、M&Aやヘッドハンティングにも活用されるなど、用途がますます拡大しています。膨大なデータから必要な情報を抽出し、傾向や構造を把握するために、まずは特許情報にあたってみることをお勧めします。

<謝辞>
本文の特許情報分析には、特許情報分析ソフト「CSV-Aid」ならびに特許情報データベース「CKS-Web」(共に中央光学出版梶jを用いました。


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第11回 [ 知的財産と経営〜リスクマネジメントから戦略型へ ](2009/8/25)



 知的財産の世界でよく用いられていながら、その定義がいまひとつ明確でないものに「知財戦略」「パテントマップ」という言葉がある。今回はこの2つの言葉をキーワードに、企業経営の観点から知的財産について考えてみたい。皆様が知的財産と企業経営の接点について、改めて考えていただくきっかけになれば幸いである。

1.経営における知的財産の役割〜リスクマネジメント+α
 企業活動を考える上で必要な観点は2つ、ずばり@収益を上げる機会をどう見つける(創出する)か、ということと、Aそれに伴って発生する、企業活動を停止に追い込むようなリスクをどう管理し、またそれに対応するかということである。前者の活動は創造的・積極的活動であり、後者はどちらかというと受動的で管理的な活動である。何事もそうであるが、企業活動においても「ローリスク・ローリターン」「ハイリスク・ハイリターン」であるため、積極的に収益の機会を見出し果敢に投資するには、厳密なリスク管理が必要となってくる。(この観点からすれば、昨年のサブプライムローン問題の根源は「リスク管理の甘さ(もしくはリスクの隠ぺい)」であることは言うまでもない。収益機会追及に偏った企業活動の末路、とも言える)
 さて、知的財産が経営において果たす役割も、上記の2つの側面がある。つまり、独自の立場を保護・強化し、高収益を求めて積極的に投資を行うための活動と、権利の侵害などのリスクを回避するための活動が存在する。知的財産の場合、前者の活動が後者の活動に結びついている場合もあり議論を複雑にしている側面がある。
 以下においては、近年ますます重要視されている前者の活動を、経営戦略の文脈に位置づけ、知的財産に関する活動がどのような側面から経営目標(=収益)にコミットできる可能性があるのか整理する。

2.経営戦略と知財〜「知財戦略」とは何か?
 企業活動の目的はなにか? 掲げているビジョンやミッションは各社それぞれであるため、一見すると、様々な目的があるように思える。しかし、その根底にはいずれにも共通するものがある。それは企業それ自体の存続である。人間や多くの生物と同様に、企業においても自己の存続自体が、一つの目的となっている。そのためには企業は生存競争に勝ち、社会に対して付加価値を生み出し収益を上げる(上げ続ける)必要がある。

 企業経営における考え方・その方法論として、いわゆる経営戦略がある。経営戦略については様々な理論が提唱されているが、大多数は以下の5つのいずれかに分類できるといわれている。

 @ 戦場・市場タイプ
 ポーターの「ポジショニング戦略」がこの典型。業界や市場の中に自社に有利な競争上の位置を見出すことで、戦いを有利に進める、あるいは戦わずして勝つ、ということを目指す戦略である。ポジショニング以前の事業立地(市場選択)により企業の成長が決まるとする「戦略不全」論の三品氏のような視点も、この分野に分類する。

 A 独自資源タイプ
 ハメル/プラハードの「コア・コンピタンス」やバーニーの「リソース・ベースト・ビュー」などがこれに当てはまる。「他にはまねできない理由(資源)があるから儲かる」とするものである。

 B 差別化タイプ
 いわゆる「差別化戦略」であり、商品やサービスの差別化を図ることで一定のポジションを確保する、競争優位を確保する、というものである。新たな軸を設けて差別化を図るとする「ブルーオーシャン戦略」(キム/モボルニュ)もこの一つである。

 C 顧客視点タイプ
 レビットやコトラーなどが提唱する、顧客の課題を解決することが商品やサービスの本質である、とするものである。有名な「顧客は4分の1インチ・ドリルを欲したのでなく、4分の1インチの穴を欲したのである」という言葉から分かるように、顧客視点を徹底することが、収益につながるという考え方である。

 D メッセージタイプ
 市場活動は顧客の頭の中で行われる、として、商品自体よりも商品に付随するストーリーやメッセージが重要であるとするものである。これは、マーケティングとは、製品の差別化、独自資産を競う場ではなく、「顧客の頭の中での戦いだ」という考え方で、一言で言うと「どんなにいい商品も伝わらなければ意味がない」ということである。

経営戦略が整理できたところで、次に各戦略が知的財産とどのような結びつきを持つのか整理してみたい。

 @ 戦場・市場タイプ
 代替技術や代替商品群を含む、広義の「市場」「ポジション」の選択において、特に知的財産との関連を見出すことは難しい。狭義(特定の商品)において、参入障壁となる場合があるが、それはむしろBの文脈で議論されるものと考えたほうがよさそうである。

 A 独自資源タイプ
 広義の知的財産として、ある市場・商品・顧客に関する知識や特定の技術がコア・コンピタンスとして機能するという考え方は成り立つ。また、そういう知識や技術を持つ人材もコンピタンスである。特定の顧客に関する知識、という視点はCにも該当する。

 B 差別化タイプ
 他社が作れない(売れない)理由として、特許が存在する、というケースがありうる。つまり差別化要素としての特許による保護、がありうる。またモノづくりにおいて、機能の差別化の場合には特許がポイントとなりやすいが、製造品質のようなものの場合には、特許ではなく工程・プロセス上のノウハウとして管理される場合も多い。

 C 顧客視点タイプ
 顧客およびその課題について、あえて知的財産との関連を見出すとすれば、それは「営業秘密」の分野であろう。特定の顧客の課題などに関するデータを蓄積している場合には、それはこの戦略において重要な資産である。

 D メッセージタイプ
 モノ自体ではなくそれに付随するストーリーやイメージというのは、つまり「ブランド」である。「意匠」「商標」や「著作権」といったものが、ここにかかわってくる。

 狭義の知的財産がかかわりを持つのはBにおける特許、とDにおける「意匠」「商標」である。広義では、Aの「コンピタンスとしての知識(特に技術的知識=技術資産)」も知的財産の範疇であろう。
 ここで分かるのは、まずは経営戦略(企業戦略もしくは事業戦略)において、どのような戦略をとるかによって、知的財産との結びつきも大きく変わってくるということである。無論、実際の経営戦略においては、これらを組み合わせた戦略が選択されることもあるが、例えば、@の戦略を中心に活用する企業においては、特許の取得というのはあまり重要な活動とはみなされず、むしろ、いかにして収益性の高い市場を見出すかということに限られた経営資源を割くことになる。またDの戦略を中心に進める企業においては、「知的財産」とは「意匠」「商標」や「著作権」等が中心となり、ブランド価値を高めることが重要な活動となる。
 このように一言で「知的財産」と言っても、根本となる「経営戦略」によってその内容や位置づけは大きく異なるため、「知財戦略」という言葉を使う場合には、その前提となる「経営戦略」に注意を払う必要がある。経営戦略とは結局のところ、限られた経営資源をどう分配するか、それによりどう収益を上げるかということであり、知的財産に関する活動も、当然この文脈の中に位置づけられる。
 一言でいえば、「経営戦略を踏まえ、経営目標にコミットした知財活動計画(もしくは方針)」を策定することが、「知財戦略」の立案なのである。

3.何のためのパテントマップか〜ハザードマップと技術情報マップ
 「知財戦略」と並んで弊社がよく質問を受ける言葉に、「パテントマップ」がある。「パテントマップにはどんなものがありますか?」に始まり、「・・・の場合に最適なパテントマップはどんなものでしょうか?」に至るまで、様々な質問を受ける。では改めて、「パテントマップ」とはなんだろうか? いくつかの答えが考えられるが、多くは以下のいずれかに相当するのではないだろうか。

 @ ある技術や製品について、他社の権利範囲をまとめ、図表化したもの。例えば、開発会議などで、「A社の特許は×××の範囲であり、弊社製品は抵触しておらず、開発を進めても問題ない」などという説明によく用いられる。知財部門で作成する場合が多い。
 A ある技術や製品について、どの会社がどのような技術を用いているか、特に課題や解決に注目して整理したもの。例えば研究や開発の方針策定時に「すでに他社が×××のような技術に取り組んでいる。我々はどうするのか?」といった検討材料として用いられる。知財部門と技術部門で協力して作成する場合が多い。
 B Aの「マップ」や「リスト」に@の権利情報を重ね合わせたもの。すでに他社が取り組んでいる分野+その中でも他社が権利確保している分野、の情報群である。


 単純化するために、@とAの比較を行ってみよう。2つは、いずれも「パテントマップ」であるかもしれないが、その内容は大きく異なる。@では「権利情報」を主眼に置いており、主にプレゼンテーションや報告などの「確認作業」のためのマップである。マップを作製した時点で、結論が出ている(出ていなければ会議は紛糾するでしょう)。つまりこの場合のパテントマップは、いわゆる「プレゼン資料」「説明資料」であり、結論確認のための「クローズド(閉じた=そこで終わり)」な資料なのである。比喩として適切ではないかもしれないが、地震マップや水害マップのような「ハザードマップ」の一種であると考えることもできる。
 他方、Aの場合には、用いているのは主に「技術情報」である。そして、この情報をもとに技術分門が今後の研究や開発の方向性、ネタの探索などを行う。つまりこの場合のパテントマップは「技術情報」のリスト・データベースであり、この時点で結論が得られているわけではなく、ここから検討を始めるという「オープン(開いている=ここから始まる)」な資料なのである。あるいは、技術者の創造活動のための資料、と言ってもよい。
 同じように、「特許」のデータベースから作成するために混乱が生じているのだと思われるが、これまでも繰り返し述べてきたように、特許情報は「権利」と「技術情報」の側面を持っており、そのどちらをどう使うのかと考えれば、わかりやすい。

4.「特許課」から「知財部」へ〜技術イノベーションインフラの整備
 私がメーカーの開発部門にいた当時は、「知的財産」「知財」という言葉なく、特許に関する業務は「技術管理部特許Gr」や「総務部特許課」といった名称の部門で行われていた。その後10年ほどで、大手のメーカーにはほとんど「知財部」「知的財産管理部」といった部門が創設され、知的財産に関する活動が経営上ますます重視されてきたことがうかがわれる。
 では、以前と今で、いったい何が変わったのであろうか。「知財部」には、「経営上」何が求められているのであろうか。私自身も開発型ベンチャー企業の経営に携わった経験を踏まえ、またこれまで多くの経営者や知財部の方々とお話をした結果、知財部に求められているものは以下の3つ、@創造活動の支援A諜報Bリスクマネジメントではないかと考えている。

 @ 創造活動(技術イノベーション)の支援:開発型企業において、技術イノベーション(以下、イノベーション)が重要な競争力の源泉となるが、そのためのインフラ(人材やシステム)を全社で横断的に整備する部門として、知財部は大きな可能性を有している。
 A 諜報:いわゆる情報収集・分析活動である。これは、特許の技術情報としての有用性に注目し、競合他社を中心とした関連企業の技術開発動向調査を行う(もしくは支援・指導する)ものである。最近では、知財部内に技術情報Grなどを設置し、そこが中心となり技術部門と一体で実施する例が増えている。
 B リスクマネジメント:これは、従来の特許関連活動を中心とした法務的活動である。自社の事業範囲を確保し、他社権利の侵害などのリスクを低減、もしくは事前予測し対策を講じることで事業継続リスクを管理することである。


 従来Bの活動は十分行われており、Aについても手軽な特許情報分析ツールなどが普及し、そのインフラが整備されつつある。したがって、今後注目すべきは@の活動であろう。「イノベーションの支援」は、企業の競争力の源泉にかかわる非常に重要な活動である。これは、技術導入のようなオープン型のイノベーションにおいても同様である。オープン型のイノベーションにおいては、技術の目利き、ビジネスモデルや契約、特許に関する複合的な知識とスキルが必要とされるため、これらのスキルを身に付けた上で事業活動を主導できる人材が必要とされている。こういった人材をいかに育成し、企業活動にイノベーションをシステムとして組み込むことができるか、このインフラ整備こそが、これからの知的財産部門の中心的業務となりうる部分である。

 つまり知財部のミッションは、「リスクマネジメント」「諜報」「イノベーションの支援活動」を通じて企業の競争力を高め、収益力を向上させることなのである。余談になるが、私が以前所属していたコマツ(鰹ャ松製作所)では、当時の社長(坂根氏)が「ダントツ商品」という言葉をよく用いていた。他社に比べて圧倒的な競争力を持つ商品、という意味である。モノづくり企業の成長はこの「ダントツ商品」の企画・開発・製造・販売にかかっており、ここはいわば「主戦場」「現場(ライン)」である。それをサポートするスタッフ部門の一つである知財部が、この現場の支援を通じてどう経営にコミットできるのか、それを共に考え、提案・支援するのが弊社のミッションである。次回コラムでは、イノベーション創出のインフラ整備、という観点から知財教育について論じる。

<参考資料>
 ・日経知財フォーラム http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/gov/20090422.html
 ・ストラテジー&タクティクスHP http://www.sandt.co.jp/basics.htm
 ・「戦略不全の因果」三品和広(東洋経済新報社)


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第12回 [これからの知財教育〜イノベーションシステムの構築と人材育成 ](2009/9/8)



 最終回は、前回取り上げた「イノベーションの支援」という観点から、人材育成・知的財産教育についてまとめてみたい。

1. イノベーションと人材育成
 前回も述べたように、モノづくり企業における競争力の源泉としてイノベーション(技術イノベーション)の重要性はますます高まっていく。では、イノベーションの根源はなにか。それは人材とそれが生み出す「知」である。つまりイノベーションのインフラは主に人材であり、それを整備することはイコール人材育成なのである。そのための「場」としての何らかのシステムの整備、ということもあり得るが、それは人材がいてこそ機能するものであろう。


 そして、オープン型のイノベーションにおいてもそれは例外ではない。外部から技術を導入する場合には、技術の目利きが必要であるが、通常自社で開発を行っていない技術について目利きのできる人材はほとんどいないため、育成することが必要となる。例えば、塩野義製薬株式会社でFINDS(http://www.shionogi.co.jp/finds/index.html )という創薬シーズに関するオープンイノベーションプログラムを推進している坂田氏は、知的財産マネジメント研究会(通称Smips)での講演にて(2009年7月18日)、「塩野義製薬がFINDSで目指すところは、新しい創薬シーズの発掘とそれを可能とする人材の育成にある」と発言し、「技術の目利き人材」の育成が目的であると述べている。またその際に、「目利き担当者には、技術のみならず特許や契約などの知識も要求される」とも言っている。

2. エンジニアのための知財教育とは
 このように、今後ますますイノベーションを担う人材の育成が重要課題となってくると考えられる。その中心は、言うまでもなくエンジニア(技術者)である。そして、イノベーションを担うエンジニアには、単に技術的知識だけではなく、外部機関との関係構築能力(コミュニケーション能力・契約などの法務的素養)や特許などの知的財産権に関する知識やスキルが要求される。
 ここに至って、エンジニアに必要とされる知的財産の知識およびその教育が明らかになる。単に制度や法律条文を、「特許という制度があるから」と教えるのではなく、ビジネスのフローに沿って必要な知識やスキルを教える必要がある。その範囲は、単に特許制度にとどまらずその前段階の「アイデアの創出」から「特許情報の整理分析」、オープンイノベーション戦略をとる場合に必須となる「外部機関との契約における注意点」まで多岐にわたる。これらの教育をすべての人材に一度に施すことは困難であるため、教育を施す前にそれぞれの職能や担当業務に応じた必要スキルを整理し、それに基づいてカリキュラムを構築し教育を実施することとなる。

3.教育における3段階〜動機付け、習慣化、定着
 多くの日本人は、学習は大学までで終わり、企業に入れば必要ないと考えている。あるいは少なくとも、学校で行っていたような学習は不要だと考えている。しかし、人間の記憶は年とともに失われ、また人間の脳の可塑性も年々失われていく。むしろ、企業に入った後こそ、新しい知識を取り入れ定着させるために、これまで以上の努力が必要とされる。以下、独習も含めて教育を施される側からみた場合に「学習」、教育を施す側の場合には「教育」を用いる。

 学習においては、以下の3つの工程、@動機付けA習慣化B実施・定着、が存在する。企業教育において、もっとも大きな課題となっているのは@動機付けである場合が多い。教えようとしても話を聞かない、意識が低い、といった意見をよく耳にする。内容に関する問題はさておき、上記の3つの工程にはそれぞれ適した学習方法が存在する。「動機付け」において、もっとも有効なのは「セミナー」等の対面学習である。学習者が主体性を持っていない状態が「動機付けされていない」ということであるため、まずは主体性を持たせるための工夫が必要であり、対面学習は最適である。セミナーにおいて、話者は受講者の反応を見ながら適宜教育を進めていくことができるため、柔軟性が高く動機付けのような不定型の作業に向いている。

 十分に「動機付け」された学習者に対しては、「独習」が最適である。学習者のペースで進めることができ、効率が良い。ただ中には、業務が多忙であるなどの理由で「習慣化」にたどりつかず、再び「動機を失ってしまう」学習者も多い。こういった学習者の「脱落」を防ぐには、e-learningなどの「管理が可能な」メディアを用いることが有効である。オンライン教育の場合には、システム上の工夫により各自の学習の進捗を管理者が確認することができ、必要に応じて再度「動機付け」を行うなどの処置を早期に取ることができる。一度失ってしまった「学習の動機」を取り戻すのは困難であるため、進捗管理は非常に有用である。このような「落ちこぼれをなくす」システムが、習慣化の段階では必要となる。

 一度「学習習慣」がついた学習者は、業務を通じてその知識を実施活用し、定着を図ることが重要である。ここでは、「OJT」といわれる業務での指導が一般的である。一度学習習慣がついているので、書籍やインターネットなどから主体的に情報を収集し、自ら学習を進めていくことができるため、業務上の目標作成(いわゆる目標管理シートの作成など)とともに各自に「学習計画」を立案させることで、独習が継続できる。必要に応じて、資格試験などを取り入れ、マイルストーンを明確にするとなおよい。知財の世界では、「知的財産管理技能士」(いわゆる知財検定)などが、その一つである。また、短いサイクルで確実に定着を図るためには、学習時の課題提出や演習の実施(セミナー+演習など)が効果的である。

 社会人・企業人の学習においては、こういった様々なメディアをうまく組み合わせて活用し(メディアミックス)、繰り返しの実施を通じて知識やスキルの定着を図ることが重要であり、長期的な活動であることを理解する必要がある。また、業務活動でとっさの判断を求められた場合、ベストなのは調べることなく必要な知識が出てくることであるが、調べる必要がある場合にも「どこのなにを」調べればよいのか(あるいは誰に聞けばよいのか)が分かるだけでも大きな違いとなる。まずは、後者のレベルに到達することを目標に学習を進めてみてはどうだろうか。

4.これからの人材育成と知財教育〜知識社会への対応
 これまで十二回のコラムでは、「エンジニアに必要とされるスキルはなにか」をいうことを主眼に置きながら、「特許情報の活用法」「アイデア創出」「契約」など知的財産に関連するトピックを取り上げてきた。実はこれらトピックは弊社で提供している各セミナーコンテンツ(メイン12コンテンツ)およびe-learningコンテンツの抜粋であり、そのまま(導入用の)教材としても活用いただけるものである。


 また十一回と最終回においては「知的財産教育」「知財戦略」「パテントマップ」をキーワードに、知財と経営のかかわりを通じて、これからの知的財産教育がどうあるべきか、人材育成と知的財産教育のかかわりについていくつか話題を取り上げ、また私見を述べさせていただいた。
 「知的財産」「知財」という言葉が広く使われるようになったのは、2002年の当時の小泉首相が設置した「知的財産戦略会議」がきっかけではないかと、ある関係者に伺ったことがある。まだ新しい言葉であるため、とらえ方が様々であり混乱が生じている部分も否めないが、その意味することが「特許」およびその中でも法律的な部分だけにとどまらないことは明らかである。
 例えば、自社の技術資産を業界の標準や規格とすることで、開発競争や市場でのポジションを優位にするという考え方も、知的財産と密接な関係がある。この場合、標準(もしくは規格)となる技術資産を権利として押えておくことで、競争を自由にコントロールできる。下名も風力発電関連の熾烈な技術標準争いを体験し、その重要性を痛感した。例えば、ポテンシャルの低い競合他社の技術が標準化・規格化された場合には、性能優位で差別化することができず、本来競争劣位の企業が優位な戦いを進めることが可能となる。これなどは、「戦場・市場型」戦略(詳細は当コラム十一回目を参照)の延長にある「自社に有利なポジション(どころか市場自体をも)を作りだす/つくり替える」という手法であろう。また、日本が苦手とする「メッセージタイプ」の戦略は、高付加価値なモノづくりにおいて今後ますます重要になる。そのためには、ブランドマネジメントという視点から各種の知的財産をとらえ直し、活動を強化していく必要がある。ヤフーオークションが、徹底したコピー商品排除によって顧客の信頼を勝ち取った結果、ビジネスとして成功したといわれているが、それも一つの例であろう。

 欧米では「知識社会の到来」といわれて久しい。日本もすでにその只中にいる一方で、人材も含めたインフラ整備は遅れているのではないだろうか。本コラムが、今後の皆様の企業活動の参考になれば幸甚である。

<謝辞>
 本コラムを執筆するにあたり多くのヒントをいただきました、知財関係者、各企業の経営者の皆様、知的財産部門の皆様に、この場を借りて御礼を申し上げます。また今後とも、ご意見などお寄せいただけますよう、お願い申し上げます。

<参考資料>
 ・「知識社会の衝撃」D.ベル(阪急コミュニケーションズ)
 ・「7つの習慣」S.R.コビー(キングベアー出版)



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楠浦 先生のご紹介


【ご所属】
 TechnoProducer 株式会社 楠浦 崇央
  http://www.techno-producer.com/
  Mail:info@techno-producer.com

【略歴】
 ・川崎重工業梶A鰹ャ松製作所を経て、ナノテク研究開発ベンチャー設立。
  現在、特許情報調査・分析のTechnoProducer株式会社 取締役

【セミナー・教育活動】
 ・ナノインプリント技術を中心に、講演は50回以上、書籍6冊。
  また、現在では、大手企業のマネジメント講座担当、技術マーケティング顧問等、
  特許教育・技術者教育・顧問業務を幅広く担当。
 ・川崎重工業、小松製作所在籍時代には京都大学工学部機械工学科で機械設計演習を担当し、
  学生に機械設計を5年間にわたり指導。
  また、実際に学生が機械工学に親しめるように、自らが設計したエンジンを寄付し分解組み立て実習も指導。
 ・近著「ハニカム構造の応用と機能」(CMC出版)に於いて、ハニカム構造に関連する特許分析について執筆。

【学会・協会活動等】
・日本材料学会会員(疲労部門委員会委員)

【メッセージ】
 TechnoProducerは、弁理士・調査員・エンジニアのチームが、
 法律・調査手法・技術の観点から最適な調査・分析・教育をご提案、実施いたします。






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