欧州の食品用器具・容器包装材料規制 コラム/化学物質情報局

欧州の食品用器具・容器包装材料規制 コラム/化学物質情報局

よくあるお問合わせよくあるお問合せ リクエストリクエスト セミナー会場セミナー会場へのアクセス
セミナーのメニュー

化学・電気系 その他各分野
一覧へ→
  ヘルスケア系
一覧へ→
情報機構 技術書籍情報機構 技術書籍
技術書籍 一覧技術書籍 一覧
   <新刊書籍>
  ・  6G材料
  ・  ラベル・SDS 作成の手順
  ・  PFAS
  ・  労働安全衛生法
  ・  IPランドスケープ
電子書籍電子書籍
化学物質管理化学物質管理
通信教育講座通信教育講座
LMS(e-learning)LMS(e-learning)
セミナー収録DVDDVD
社内研修DVD
セミナー講師のコラムです。講師コラム
  ↑2023/7/7更新!!
お申し込み・振込み要領お申込み・振込要領
案内登録案内登録
↑ ↑ ↑
新着セミナー、新刊図書情報をお届けします。

※リクエスト・お問合せ等
はこちら→ req@johokiko.co.jp



SSL GMOグローバルサインのサイトシール  



 
米国における食品用器具・容器包装材料規制
 

塩ビ食品衛生協議会 常務理事 石動 正和 氏

 (2011・8・15)


 

1. はじめに


  米国における食品用器具・容器包装材料規制は、複雑な構造をとっている。 現在新規材料に対し事実上機能しているのは、食品接触物質届出制度(FCN)(2000年)である。 一方1958年に制定された食品添加物申請制度(FAP)が現在も存続している。 更に1958年以前に米国社会で広く使用されていた間接食品添加物については、上記の2つ制度に組み込まれることなく、「既認可物質」として事実上使用が認められている。 これを含め規制の除外は複数存在する。 米国の食品用器具・容器包装材料規制に係るこうした枠組みについて、簡潔に紹介することにしたい。


 

2. 米国における規制


 

2.1 食品医薬品化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act : FFDCA)


 1938年制定された食品医薬品化粧品法は、現在の法FFDCAの第402節(a)に示されるものであり、食品の変質劣化への保護のため、用いられる包装材料は食品を汚染してはならないとされる。 背景として、FDAが食品工業界と連携し恒常的な規制の制定を図ったこと、食品工業界が確認証明の必要性を主張したこと、包装材製造販売者が、FDA及び農業省(United States Department of Agriculture : USDA)に安全性についての非公式意見書(No-Objection Letter)(「異議なしの手紙」、ニックネームは「おまけの手紙」)を求めたことが知られている。 またThe Society of the Plastics Industry, Inc.(SPI)が、自らGMPに基づき、1958年改正以前の既認可物質リストを作成していることが注目される。


 

2.2 食品添加物規制改正と食品添加物申請制度(Food Additive Petition : FAP)


 FDAに食品添加物の事前登録を求める動きは、1958年制定されたこの申請制度によりスタートした。 食品添加物の定義が明らかにされ、食品添加物を規制する権限がFDAに与えられ、意図された使用条件下で添加物が安全に使用される立証が求められることになった。また食品添加物の評価に対する安全性基準が設定され、危害がないとする合理的確実性が整理された。 またデラニー条項(非発がん条項)が導入され、ひと又は動物にがんを誘発すると見なされる化学物質の食品添加物使用を明確に禁止することになった。

 食品添加物の定義はFFDCA第201節(s)で示され、食品添加物を、使用が意図され食品中の成分になると合理的に予測される全ての物質と定義された。21 CFR (Code of Federal Regulations)には、つぎの3つの型がある: (1)第172節 直接食品添加物(食品への技術的効用がある)、(2)第173節 2次的食品添加物(食品加工に添加され、後除去されるもの、食品への技術的効用はない)、(3)第174〜186節 間接食品添加物(食品への技術的効用はない)。 ここでの規制オプションの1つとしてFAPが生まれた。

 FDAが認可するまでその包装材料の使用は非合法とされた(FFDCA第409節(b)〜(g))。 記載された規制内容は一般に利用でき独占的ではない。 FDAは21 CFRにある食品接触物質(Food Contact Substance : FCS)の安全性について責任を有する。 FAPのFCSは3,394品目あり、CFR内で一定の体系を示すものの、物質別、材質別、製品別、用途別が混在した複雑な構成である。 ともあれFDAは42年の長期に亘り、年平均およそ80品目の評価を行ってきたことになる。


 

2.3 食品医薬品行政近代化法(Food and Drug Administration Modernization Act : FDAMA)と食品接触物質届出制度(Food Contact Notification : FCN)


 FAPでは、新規FCSの申請から登録まで数年かかることがまれではなかった。 FDAのレビューに便宜を図る必要もあり、1997年工業界、議会は協同し、FDAMA、代替システムFCNプログラムを提案した(FFDCA第409節(h))。 FAP制度は存続するが事実上FCNプログラムに移行し、2000年1月受理作業をスタートした。

 FCSはつぎの2つから構成される:間接食品添加物(ポリマー、モノマー、重合助剤、添加剤、器具の成分、包装材の組成で照射されるもの)、2次的食品添加物(消泡剤、沸騰水用添加剤、イオン交換樹脂、砂糖加工用添加剤、肉及び鶏肉加工用抗菌剤)。 これらの安全性評価の実施、新たな用途についての効率的効果的な評価のため、上市前届出(Pre-Market Notification : PMN)制度が設けられた。

 届出に必要な情報として、FCS名称、加工プロセス・技術的効用及び使用において意図される条件、安全性についての立証及びそのデータと情報、環境上の配慮などが必要であり、FDAは4つのガイダンス(事務手続・化学・毒性学・環境)を用意している。 届出者は届出前にFDA係官と協議し、受理に先立ちアドバイスや情報を得る。 当該FCSの適合性を概略評価することで、実務上有効であるとされている。

 FCNプログラムの評価のプロセスは概ねつぎの通りである。 受理からおよそ3週間以内に第1回評価会議を行う。 この会議でFCNが受理されれば、届出者に確認が通知される。 第2回評価会議で、異議(Object)がないときは最終的な通知が送付される。 もし第2回の評価会議によっても受理できないときは、届出者に異議が通知される。 このプロセスの全体は120日内を目標に処理される。届出が不完全であれば、FDAは不備を通知する。 このとき届出者の返答期限は10日である。届出後のオプションとしてつぎの3つがある:(1)インベントリ登録、(2)登録の保留、(3)届出者による取り下げ。また登録後のオプションとしてつぎの3つがある: (1)他者による同じFCSの届出(届出者の独占となるため、他者申請は新規届出となる)、(2)FCN発効後の変更(FCSの品質規格、製造プロセスの本質的変更は新たな届出が必要)、(3)発効したFCNの撤回。

 評価の概要はつぎの通りである。 安全性評価におけるクリティカルな成分の特定。 スクリーニング手続きの確認。届出の受理に影響するような不備、大きな問題点かどうかの判定。 またFCSの必要データとしては、化学的データ、毒性学的データ、暴露データ、環境影響データがある。 ここで移行試験と現実の食生活による暴露との整合化を図る方法として、消費係数、食品分配係数を用いる。 現在のFCSリストは物質リストとしての体系を示さず、届出順で示されている。 FCS届出の最新番号は現在1,083であり、年平均およそ100品目が届け出られてきたことになる。 但しこれらは食品用器具・容器包装分野固有のものではない。 また食品用器具・容器包装材料に係るナノテクノロジー材料の規則、指令の発行には至っていない。

 FAPとFCNはつぎの点で類似している:安全性を証明する仕組み。 法的強制(shall)ではなく、当事者への許可(〜してよい)あるいは軽い命令(〜しなさい)(may)としての位置づけ。 自己決定(Self-determination)の精神が継承されている。安全標準で発がん性へのデラニー条項適用を含む。 データ要求の範囲は、化学、毒性学及び環境影響評価。

 一方、つぎの点で相違する: FAP−FCSは、FDAが独自に安全性評価を行い規則として発行するまで適法とみなされない。 化学物質の規制であり、製造者によらない一般的に記述された規則であり、だれもが利用可能。 しかし登録まで2〜4年、場合によっては5年かかるケースもある。

 FCN−労力と時間がかからない。 FCSは、FDAが届出内容に異議がなければ、120日以内に自動的に適法となる。 届出内容は独占的で届出者とその顧客だけに有効。 競合会社が望むときは、改めて自ら届出なければならない。 従いCase by Case Systemとも言われる。


 

2.4 規制からの免除


法に規定される食品添加物から除外される代表的なものとしてつぎがある。
既認可物質(Prior Sanctioned Substances)
つぎに代表されるいくつかの資料に分散し、マスターリストはない。
(1)21 CFR第181部、サブパートBに収載された物質。
 
(2)米国食品医薬品官報協会で発行されA.J.Lehmanが1956年Food Packagingにリスト化した物質。いわゆるLehmanリスト。
 
(3)1958年以前にFDA・ USDAより発行されたNo-objection Letterに基づく化学物質。
 
一般的に安全と見なされる物質(Generally Recognized As Safe : GRAS)
 GRASは歴史的に2つの制度からなる。
(1)GRAS Affirmation Petition(認可申請)(1970年まで)
 21 CFRの第182部(直接添加物、但しいくつかの物質は間接添加物として使用可)、第184部(直接添加物、但しサブパートAで純度規格がない物質は間接添加物として使用可)、第186部(間接添加物だけ)
GRASは直接食品添加物と間接食品添加物の境界領域にある制度と見なされる。これは食添を間接添加物として利用する際、不必要と思われる再評価を事実上免除していたからではないかと思われる。
 
(2)GRAS Notification(届出)(直接添加物、一部間接添加物を含む)(1998年〜現在)収載279品目。
 
 登録基準としては、暴露量が小さいこと、科学的評価が明確な結論を有していること、FDAが規則の閾値(Threshold of Regulations : TOR)免除を指示したものがベースになる。
(1)一般には、科学的評価により安全であると専門家が認めたもので、この結論を支持する毒性データが発行されていること。
 
(2)1958年以前に使用され、科学的評価又は食品に長く使用されている経験があるもの。
 
(3)FDAの規則にリストされているもの(第182,184,186部)。
 
(4)自己決定のもの。但し出版物(論文)によるサポートが必要で、FDAが問題にしないことが前提となる。
 
 この他、規制からの免除に係るものとして、非移行物質、TOR免除、日用品、ファンクショナルバリヤードクトリン、基ポリマードクトリンがあり、運用の全体は複雑である。


 

 3. 最近の主な動き


 食品用器具・容器包装の安全監視については、関連官庁の日常業務に織り込まれていると思われるが、法律上では、2001年9月11日同時多発テロによるフードディフェンスBioterrorism Act 2002に伴う工業用ガイドライン(食品安全保護規則ガイダンス)の中で一般論として示された程度しか把握できていない。

2006年顕在化したFCNプログラムの予算問題とSPI(Food, Drug & Cosmetic Packaging Materials Committee)など工業界の支援、2009年3月12日上院に上程されたGRAS再評価・FCN見直しに係る法案S.593が注目されたが成案には至らなかった。

 食品医薬品化粧品法を改正し2011年1月5日成立した食品安全近代化法は、現在最も注目される動きである。 この法案が上程された発端は食源性疾病など食品安全問題であり、行政の基本的枠組みは、従来の問題発生時の対応型から問題発生前の予防型に大きく変化した。 同法案のポイントはつぎの通り:
(1)予防的管理:FDAに食品のサプライチェーン全体を包括した予防管理の権限を与える。全ての食品加工は予防的管理を評価され、必要な対策の計画策定を求められる。 (2)対象範囲:食品の製造、加工、包装及び保管であり、包装材料分野にも影響が及ぶ可能性がある。
 
(3)査察と適合性確認:リスクの高い設備については、稼働後5年以内に査察を行い、その後3年を超えず査察を受けねばならない(従来の査察頻度は10年と見られる)。
 
(4)輸入食品の安全性:輸入業者は、海外の供給者が安全性を保証するため十分な予防管理を行っていることを検証しなければならない。FDAは第3者機関に認証を与え、海外の食品施設の米国食品基準への適合性に対する確認業務を委託することができる。
 
(5)リコールなどの権限:FDAは全ての食品製品に対し強制的リコール権限をもつ(従来は工業界とのネゴが必要)。また不安全な食品施設の登録を留保することができる。
 
(6)協力体制:FDAと内外の関連部門との協力体制を強化する。FDAは国内機関の機能向上を図る。

 食品安全近代化法成立後、5月5日官報につぎの2つの規則が開示され7月3日より発効した: 「ひと又は動物の消費に対し食品の行政的留保を指示するとき使用される基準」、「輸入食品の事前届出に求められる情報」。 続いて5月23日規則案1件が開示され意見が募集された: 「登録済みひと用食品及び動物用食物/飼料用設備に対する予防管理」。 現段階で包装材料を特にターゲットにしたような内容は見当たらないが、今後も食品安全近代化法に係る規則についてウオッチが必要である。


〜第1回〜 欧州における食品用器具・容器包装材料規制(2011・7・1)


 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ご感想・ご要望など御座いましたら、ご一報いただけましたら幸いです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

コラム執筆者のご紹介
 
 
 石動 正和(いするぎ まさかず)氏

 

 所属:塩ビ食品衛生協議会 常務理事
 
 経歴:1973年京都大学工学部工業化学科卒。 同年鐘淵化学工業(現カネカ)に入社。 研究開発、研究管理業務に従事。 2003年塩ビ食品衛生協議会に出向。 2004年常務理事に就任。
 

 

 
 
   → 化学物質情報局へ
 
会社概要 プライバシーポリシー 特定商取引法に基づく表記 商標について リクルート
Copyright ©2011 技術セミナー・技術書籍の情報機構 All Rights Reserved.