欧州の食品用器具・容器包装材料規制 コラム/化学物質情報局

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欧州における食品用器具・容器包装材料規制
 

塩ビ食品衛生協議会 常務理事 石動 正和 氏

 (2011・7・1)


 

 欧州では20年を越える長い検討を経て、2010年1月日食品用器具・容器包装を規制するプラスチック指令が発効した。 しかし2009年11月頃から、この指令の内容を大きく改正するプラスチック施行規則(PIM:Plastic Implementation Measure)の審議が本格化し、2011年5月1日発効した。 ここでは、欧州における食品用器具・容器包装材料規制の流れを大きくまとめる。


 

1. プラスチック指令以前


 欧州が食品接触材料及び製品に係る指令を最初に発行したのは1976年の指令76/893/EECである。 ひとの健康保護と域内での材料製品の自由な流通を目的に制定された。 その13年後の指令89/109/EECは材料統括指令と称され、食品接触材料全体を包含し、その後、プラスチック(規則・指令現在数17、以下同様)、セラミック(2)、再生セルロース(1)、エラストマー・ゴム(1)などの材料ごと指令(特別指令)を生み出した。 最も件数の多いプラスチック関連の規則・指令(17)は、物質リスト(6)、溶出試験(4)、VCM規制(3)、ガスケット(2)、リサイクルプラスチック(1)、エポキシコーティング(1)からなる。 なお紙、ガラス、金属に対する固有の規則・指令は確認されていない。

 物質リストを付帯した最初の指令は90/128/EECであり、ここではモノマーリストだけが示され、モノマー指令と称される。 この指令の前に、VCM指令が継続して出されていることから(78/142/EEC,80/766/EEC,81/432/EEC)、欧州規制のこの段階において、残存モノマーの安全問題があったことが伺える。 一方添加剤リストは、モノマー指令より5年後の95/3/ECで初めて示され、ついで96/11/ECでモノマー及び添加剤の2つのリストからなる現在の原型が作られた。 これらの指令は都度の改訂を経て、現在プラスチック指令と称される2002/72/ECに至っている。


 

2. 枠組み規則、プラスチック指令


 材料統括指令を代替した枠組み規則(EC)No1935/2004は、食品接触材料及び製品が欧州域内で効果的に機能することを保証する管理規則である。 条文では表示、適合宣言と説明書類、トレーサビリティなどの安全管理に係る基本的内容が多い。 運用に係る詳細は、欧州規制の性格上、各加盟国の国内法と運用基準を個々に参照する必要がある。 Community Reference Laboratory(CRL)-FCMのサイトに収載された食品接触材料製品のトレーサビリティに関する工業用ガイドライン、北欧8ケ国が2008年共同作成したノルディック工業輸出用チェックリスト、英国食品標準委員会(FSA)が2009年6月発行した食品接触材料製品ガイドなどがある。 各加盟国における国内法整備については、数にかなりの幅があり、英、伊、仏、スペインが充実している。

 プラスチック指令2002/72/ECは、2004/1/EC、2004/19/EC、2005/79/EC、2007/19/EC、2008/39/ECの改正を経、2008年3月27日付統合版では、モノマー336品目(A節:認可332、B節:EFSA評価留保4)、添加剤572品目(A節:欧州全域でSML適合性評価終了428、B節:2008年5月1日以降実施予定144)を収載した。 なお認可された酸、フェノール又はアルコールの塩(塩として8品目)は、リストにないが認められている(付属書Ⅱ、Ⅲのそれぞれ3.)。 添加剤(B節)への収載に当たっては、欧州食品安全委員会(EFSA)によるリスク評価が前提であり、2003年10月1日を起点に20を超えるリスト及び個別テーマ(10数項目)に評価結果が示された。 プラスチック指令はその後、食品接触用プラスチック材料製品規則(ECNo 975/2009に改編され、2010年1月1日強制力あるポジティブリスト(PL)として発効した。

 欧州規制は毒性学を基本とし、ひとの健康に直接係る食品中における化学物質の濃度を管理ポイントに設定している。 プラスチック指令では、食品中移行量について総移行量制限(OML : Overall Migration Limit)と特殊移行量制限(SML : Specific Migration Limit)の2本立てで管理する。 OML設定の議論は1960年代に始まったが、20数年を経て、添加剤リストの策定前、モノマー指令90/128/EECの中で、構成成分全体の食品移行量を規制するものとして設定された。 容量1Lの立方体(表面積S/容積V=6dm2/L)を標準モデルとし、容量が500mL~10Lで液体を充填できるもの、液体を充填できるが接触表面積の測定が難しいもの、シーリング用器具については、OML=60mg/kg-食品が設定されている。 この規格値設定の背景について、Dr.L.Rossi(欧州委員会健康消費者保護総局前総務局長)は、当時食品添加物の最小添加量が1品目当たり60mg/kgであり、食品添加物以外の物質の全体管理に便利であったこと、毒性学者と化学者の会合で合意されたことを伝えている。 一方これ以外のものについて、例えば容量が10L以上、あるいは500mL未満で液体を充填できるものについては、OML=10mg/dm2-接触面積が用いられる。 ディメンジョンの異なるこの2つの規格値は、標準モデルでは等価である。

 溶出試験については、82/711/EEC、84/C102/05、85/572/EEC、93/8/EEC、97/48/EECの指令等により整備され、欧州標準EN 1186-1、EN 13130-1などでも参照される。 現実的評価のため、食品用擬似溶媒を食品4分類に従い使い分ける。 試験条件は幅広く設定され、実際の条件に近い温度、時間などから選択される。 シーリング材について、実使用条件での評価(倒立法)が用いられる。 移行試験結果を規格値との比較前に除するための換算係数(Reduction Factor)は、擬似溶媒の抽出力を、実際の食生活で摂取する油性食品の抽出力に比較し換算補正するために用いる(EN 13130-1, p.17)。 擬似溶媒が初めて導入されたのは82/711/EEC、換算係数が初めて導入されたのは84/C102/05である。 換算係数は1~5のいずれかの整数でOML,SMLの両方に用いられる。

 指令2007/19/ECでは、先の換算係数をDRF(Simulant D Reduction Factor)に言い換えるとともに、ひとの油性食品の平均摂取量(1kg-Fatty Food/D・人)、及びひとの油の摂取能力の限界(200g-Fat/D・人)を基に(指令前文(14))、新たな換算係数FRF(Fat Consumption Reduction Factor)を導入した。 同じく1~5のいずれかの整数で、当該指令付属書Ⅳに記載された親油性添加剤72品目のSML評価だけに適用される。 また同時にDRFとFRFの積からなる新たな換算係数TRF(Total Reduction Factor)が導入された、過大評価を避けるため1~25から1~5に減縮したうえでいずれかの整数で示される。 この他、Note for Guidanceには、プラスチックフィルム製品に対し、用途限定を付したファクターによる緩和措置が設けられている。 以上、換算係数は複雑な構成となっているが、移行試験と現実の食生活による暴露との整合化を図る様々な取り組みの結果である。


 

3. プラスチック施行規則(PIM)


 プラスチック施行規則(PIM)については、関連のWG会合が2009年12月1日、2010年2月12日開催され、一部加盟国でドラフトが公表された。 また欧州委員会では、PIMに含まれなかった別途の政策オプションとして、印刷インキ、コーティング材及び紙、アルミニウムへの規制案の必要性が議論され、2010年2月17日EFSAにESCO(科学協同)WGが設立され、プラスチック以外の食品接触材料のリスク評価のフィジビリティスタディが始まった。

 2010年9月10日プラスチック施行規則(PIM)は、欧州委員会健康消費者保護総局食物連鎖動物健康委員会(SCFCAH)で可決成立した。 2009年12月~2010年2月段階の討議案に対しつぎが明らかになった。
<1> 2011年5月1日、プラスチック指令・規則を廃止するとともにPIMを発効させる(第21,23条)。その発効日以前に上市されたものは、2012年12月31日まで上市を可とされた(第22条第5項)。
<2> プラスチック指令の規制範囲、食品に接触が意図されるもの、既に食品に接触しているものに対し、食品に接触すると合理的に予測されるものが追加された(第1条第2項)。
<3> 欧州市場に係る企業が最も懸念している適合宣言(DoC)を裏付ける説明資料(SD)の書き換えについては3段階の移行措置が設定された(第22条第1~3項)。 2012年12月31日までの上市品に対しては従来の指令(82/711/EEC)に準拠、2013年1月1日~2015年12月31日については、従来の指令と今回のPIMいずれにも準拠可、2016年1月1日以降についてはPIMに準拠する。
<4> 移行試験に係る擬似溶媒の変更はつぎの通り。


<5> 製造の中間段階での生産品について、DoC、SDの対象とされた(第15条第1項)。 SDの適合性を立証するものとして、モデル化(シミュレーション)が可とされた(第16条第2項)。
<6> コーティング、印刷インキ及び接着剤に係るリサイタル(6)、(30)が記載され、規制或いは管理の必要性が示唆された。

 欧州プラスチック施行規則(PIM)は、2010年10月4日WTO-SPS通報(G/SPS/N/EEC/388)を経て、12月20日閣僚理事会で承認され、2011年1月15日付官報に「食品接触用プラスチック材料製品に関する2011年1月14日付欧州委員会規則(EU)No 10/2011」として公布され、2011年2月4日発効し5月1日より施行された。 この間PIMについては、BPAを使用したPC製哺乳瓶規制に係る「2011年1月28日欧州委員会指令2011/8/EU」と整合させるため、欧州委員会施行規則(EUNo 321/2011が公布されている。

 プラスチック施行規則(PIM)に係るガイダンスドキュメントについては、当初計画より遅れ2011年後半発行との情報を得ている。 またEFSA ESCO-WGで検討されてきたプラスチック以外の材料(接着剤・コーティング剤・印刷インキ)の管理については、法的拘束力を持たない形でこのガイドラインに盛り込まれる予定と聞く。


 

4. その他の規制


 2002年1月28日付EFSA規則(EC)No178/2002は、20余の共同体エージェンシーの一つとして、科学性、独立性、透明性を有する専門評価機関EFSAを設置し(第1条)、欧州委員会(リスク管理)に対するEFSA(リスク評価)の位置づけを明らかにした。 規則はまた従来の監視制度指令92/59/EECの守備範囲を拡大し、食品・飼料に関する迅速警報システム(Rapid Alert System for Food and Feed : RASFF)を強化した(第50条)。

 2006年12月22日付GMP規則(EC)No2023/2006は、物質リストを前提とする枠組み規則に相対するもので、物質リストでカバーされないところを包括的な製造物責任に基づき管理規制するものと考えられる。 付属書には、非接触面への印刷インキ規制が示されている。 また欧州で着色剤の国内法を有するフランスは、2009年7月17日、印刷インキを除く着色剤・光沢剤・コーティング剤規制案を示した。 PL33品目、暫定リスト138品目からなる。域内全体に普及を図る動きと聞く。

 2008年3月27日付リサイクル規則(EC)No282/2008は、枠組み規則、GMP規則を発展させて策定された。 申請書類作成には、2008年5月21日付EFSAガイドラインが参照される。2009年7月6日EFSAよりこの規則に基づく最初の有効申請が示された。 2011年2月9日付第10版で63件が確認される。

 アクティブ・インテリジェント材料・製品規制については、枠組み規則で紹介され、2009年5月29日付規則(EC)No450/2009で展開された。 申請書類作成には、2009年7月21日付EFSAガイドラインが参照される。

 ナノテクノロジー材料について、EFSAは2008年後半より食品及び飼料におけるリスク評価を進め、2009年2月10日科学委員会意見書を発行した。 欧州委員会健康消費者保護総局の科学委員会(Scientific Committee on Emerging and Newly Identified Health Risks : SCENIHR)も1月19日リスク評価書を発行している。 但しこれらは食品用器具・容器包装分野固有のものではない。また食品用器具・容器包装材料に係るナノテクノロジー材料の規則、指令の発行には至っていない。


~第2回~ 米国における食品用器具・容器包装材料規制(2011・8・15)


 

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ご感想・ご要望など御座いましたら、ご一報いただけましたら幸いです。

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コラム執筆者のご紹介
 
 
 石動 正和(いするぎ まさかず)氏

 

 所属:塩ビ食品衛生協議会 常務理事
 
 経歴:1973年京都大学工学部工業化学科卒。 同年鐘淵化学工業(現カネカ)に入社。 研究開発、研究管理業務に従事。 2003年塩ビ食品衛生協議会に出向。 2004年常務理事に就任。
 

 

 
 
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